別居1年、あっという間だった。
夫から『出て行けー離婚だー!』と言われて実家に逃げてきた私はと言えば、その間離婚弁護士に相談したり、別居先の幼稚園に入れたり、怒涛のようだった。仕事も軌道とまではいかないまでも、無収入ではなくなり、なかなかに忙しくしていた一年であった。
夫からは定期的に『離婚したい』『やり直したい』『どうしたいんだ!』『無視するな!』など連絡が来ていたが、別居1年近くになるとこちらのメンタルもだいぶ回復し、鋼のメンタルとまでは言わないまでも、夫の言うことにいちいち気を落としたり、悩んだりすることがなくなってきた。
突然だが、私と子供は夫に1年顔を合わせていないし、声も聞いていない。
そして時折夫から入る連絡は、
『GOTOで旅行に行ってきた』
『ペットを飼い始めた』
『今日はジムだった』
ときたり、結構優雅に生活しているように思う。
一方で、夫は時々『死にたい』などと言うこともある。私としては決して死んでほしいと思っているわけではないけれど、
(別居前の私は、夫をいっそ〇んで欲しいと思っていたことがあり、そんな不謹慎な感情を抱くほどメンタル的に限界であった。今はそんなことは一切ないので、別居の効果は絶大である。)
私は意地でも『死にたいと思うくらいなら自分から会いにくれば良いじゃないか』とは言わない。それは『出て行け!離婚だ!』と言われ、一度も子供にも会いに来ず、GOTOトラベルには行っているという腹立たしさもあるし、後日言われるであろう、『会いに来いと言われたから来たんだ』というセリフが、姿が、目に浮かび、自分のプライドを守りたい気持ちもある。
そんなわけで、夫の命は無事なのだろうか、と思いつつも、『死にたい』という言葉に、別の話題で探りを入れるという方法で、生存確認をしているのである。
そんなある時、夫がYOUTUBERになったという一報が届いた。
夫はあれほど『死にたい』『心が苦しい』など、絶望の淵に立っているという連絡をよこしていたが、YOUTUBERとなり、生活が楽しくなったらしい。
思わず『どんなコンテンツ』と即レスしてしまった。
夫のLINEに即レスすることなど、それこそ1年ぶり以上のことである。
正直私は別居1年にして、離婚するのかしないのか、全く結論を出せずにいた。私と子供の新しいコミュニティも形成されているし、かといって、自分一人の稼ぎには不安がある。正直貰える物は貰いたいし、別居くらいの距離感で適当にズルズルお金くれ、くらいの腹黒さもある。
そんな考えもまとまらない日が続いていたが、夫がYOUTUBERになったという話には思わず腹の底から笑ってしまった。
夫はゲーム実況をしているらしい。
開始早々に数人見てくれて、チェンネル登録されているというなかなか優秀な実況者なようだ。
夫は収益化を狙い、本気でチャンネル登録者数を増やそうと、日夜何かのゲームをしているらしい。
『死にたい。どうしたら戻ってきてくれるんだ。』
と言っていた夫が1年間で行ったことは、GOTOトラベル、ペットを飼う、ジムに行く、YOUTUBERになるであった。
ここにきてやっと気づいたが、夫は恐らく、相当バカである。
しかし思わず即レスしてしまった自分がいる。
もしも別居中に配偶者と連絡が取れず、どうにかして連絡を取りたいと思う人がいれば、YOUTUBERになってみてはいかがだろうか。